Quantcast
Channel: Old school オペラ発声研究家 宮前区在住 永田孝志の日々
Viewing all articles
Browse latest Browse all 7755

バカ顎について

$
0
0

黄金期には無く、現代に、やたら多い発声の形に、リチャード・ミラー氏が揶揄する「バカ顎」がある。

バカ顎とは、やたら顎を落とし、縦に大きく開ける事を重視した亜流であろう。

物理的に説明すると、例えば、大笑いした時、絶対に顎を落とさないであろう!
上体は後ろに仰け反り、うなじは短くなる感じになる。
口は、横に開く!

これが、キアーロの極端な形だとすると、バカ顎は、ともすると、うなじが伸びきって、目つきは虚ろになり、下腹は弛み、胸郭は落ち込むのである。スクーロの極端な形なのである。

その形に近いテノールに、フランコ・コレッリがいるが、コレッリの形では、顎や喉頭を下げる事に対立して軟口蓋を笑いの形にする為に、幾分、鼻に掛かった声が特徴的になるのは、バランス論的に必然性があろう。

とは言え、コレッリの欠点は、調子の浮き沈みが激しかった事であると、一般に知れている。

要するに、キアーロとスクーロのバランスを考えると、バカ顎になる程は、縦に開けないのが妥当と思われ、黄金期の音源からも、それが聴き取れる。

前にも述べたが、うなじのアッポッジョの度合いの問題であり、それをキャンセルして、楽している分、現代は、声の梱包の蓋が無くなっているのである。

いずれにしても、全てを無に帰す「脱力論」は、細かな事が解らぬ教師には都合がよい概念である事に、充分気をつけて欲しいものである。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 7755

Trending Articles